人は誰しも、心には癒えることのない「生傷」があり、多少の痛みを抱え続けてしまうものです。
「心の傷」というのは、自然に時間が癒やしてくれることはありますが、自分が「癒そう」としなければ何十年経っても生乾きのまま残ってしまうこともあります。
私たちは、その記憶と向き合うことが辛すぎて、「嫌な出来事」を「嫌な記憶」のまま心の奥底に眠らせてしまうために、治るはずの傷がいつまで経っても癒えないのです。
その苦い「経験」を意図して「学び」に変え、「過去」のものにするのは容易ではないかもしれません。
けれど「過去」というのは、「昔のあの時代」だからこそあったものであり、「再現性」はありません。
つまり、昔あった出来事はどうやっても完全に取り戻すことは不可能です。
冷静に考えれば当然なのですが、心が「過去」に捉われているうちは、「現在」の状況と切り分けて考えることが難しいものです。
「過去を乗り越える」には、まず「現在の自分」と「過去の自分」は違うものだという認識を持つことが大切です。
人は、一つの「肉体」を持ち続けるからこそ、「過去」と「現在」の自分が繋がっていると感じます。
けれど、「過去の自分」は「昔のあの時代」だから成立していた人格であり、当時の時代と共に「今はもういない」存在なのです。
これは、「過去の自分」が「死」を迎えたに等しいということです。
つまり人は「生きながら死ぬ」とも表現でき、自分のあり方が変わるということは、人は常に「生まれ変わり」を経験しているとも言えます。
言わば「現在の自分」は、すでに「過去の自分」から生まれ変わっており、別の人生を歩んですらいるのです。
けれども、自分自身を地続きのものと考え、過去を「終わったもの」にできないうちは、過去と現在が混在する「錯覚」した時間軸の中で生きてしまうことになります。
「過去を乗り越える」には、まずこの「分別」をつけることであり、自分が向き合うのは「終わったこと」だと改めて認識する必要があります。
そのことを腹に落とし込めた時、過去の苦い記憶は「経験」となり、苦い経験は「学び」となり、今の自分の「実力」になっていくのだと思います。
そして、いずれ心の傷は完全に癒え、「過去を乗り越える」ことができるのではないでしょうか。